らしくない時計

引き継がれるモノ

“らしさ”で輝く世界を願うものだから、何を行うにしても、人一倍『自分らしいかどうか』で意思決定を行う傾向が強いと思う。  
そんな私が愛用する時計は、タグホイヤーだ。  

学生時代は、吹奏楽部や生物部、着物サークルなど文化系を攻めてきたし、服装も綺麗めコンサバに安心感を覚える私がスポーティーな時計を持つなんて、とも思う。  


母から譲り受けたそれは、両親が結婚記念にお揃いで購入したものだ。
おっちょこちょいな父が結婚指輪をすぐに無くしてしまったため、ペアウォッチが結婚指輪代わりのようなものだった。  

ある日、老眼で小さな時計版の文字が読めなくなった母は、時計を外した。 母の小さな時計が私の左腕で輝くようになったのを見た父は一言、「あれ、それママさんの...?」とだけ言った。  
ほどなくして、父は別の時計を買った。以来、父の時計を目にすることはない。  超がつくほど真面目な父が、母とのお揃いを意識して時計を付けていたのかもしれないと思うと、なんだかこそばゆく、微笑ましく思った。

私と時計のこれから

モノを通じて絆を求めるなんて父らしくないなと思ったけれど、そんな『らしくない』振る舞いが、家族の絆を私の胸に刻んでくれたことは確かだ。  
欠けてしまった相棒を、今度は私が見つける日が来るのだろうか。  
今日も私は、らしくない時計を付けて、私らしく生きていく。 未来への希望を刻みながら。

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横川真依子

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